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[ 81] vol.39 Au revoir! 昔のフランス……。そして気になる“氷屋”さん - 浜矩子のお金の正体の話 | カフェグローブ
[引用サイト]
http://www.cafeglobe.com/news/hama2/index.html

フランス大統領選は右派サルコジ氏が勝利。その後反発する人々が放火、投石……といったニュースも報道されました。「大変そー。日本は移民問題もないし、失業率もフランスよりましだもんね」。ノン! 日本の私たちこそしゃきっと意見せねば。例えば……。
Cafeglobe(以下C) 注目されていたフランスの大統領選、右派のサルコジ氏が勝利をおさめました。ということは、フランス人もアメリカのような競争社会、改革路線でやって行こう! ってことでしょうか。
浜さん(以下H) 変わらざるを得ないと考えた人が相対的に多かった、と言うことですね。53.06パーセント対46.94パーセントでしたか。サルコジとロワイヤル、両氏の違いをひとことで言えば、“ロワイヤルの分配に対しサルコジの競争”という図式ですね。フランス人にしてみれば、嫌々、だとは思いますが今は競争を選ばざるを得ない、という判断でしょう。
C いままでアンチアメリカだったのに。バカンスたーっぷりとって、あくせく働くより人生を楽しみたい、というようなフランスらしい雰囲気が消えてしまうとしたら、それは寂しいような……。
H 「武士は喰わねど高楊枝」じゃありませんが、失業率というような生々しい内政問題があまり政治上の大テーマにならない国だったんですね。ことのほかフランスの大統領というのはそういう雰囲気でした。だから今のようになってしまったという面もありますね。
H そういう流れですね。ただ、全面的にそっちに行ってしまったら、誰もが競争にくたびれはててしまう。地球を上げて食うか食われるかをやっているうちに共食い状態になって誰もいなくなってしまう。だから、競争原理が前面に出れば出るほど、つまりサルコジ路線になればなるほど、本来は政策が補完的役割を果たす必要があります。分配のことを考え、弱者救済に取り組まなくてはいけないわけです。そんな時に政策までが市場原理をプロモートするのはおかしいことです。日本が今そうなっていますけどね。
C フランスの失業率は約10パーセント。それに比べ日本の失業率は約4パーセント。抱える問題の深刻度は違うように思うのですが。
H ええ、数字の上では。失業率のレベルは全然違いますね。しかし、かつてはほとんど完全雇用状態がいつでも当たり前、という感じだった日本にとって、なかなか4パーセント前後から下がらない失業率というのはやはり衝撃が大きい。かつての日本の社会においては失業者を出さないために、民間が頑張っていたという面があります。かつて日本が、護送船団だ、平等社会だと言われていたころには、失業率が1パーセントを上回るとみんなパニックに陥っていました。2パーセントになったらこれはもう世の終わりだと言うくらいで。それに比べるともう2倍ですからね! 1パーセントの4倍ですから。衝撃の度合いはね、フランスに勝るとも劣らないということです。
H しかし、陰湿ないじめだとか凶悪犯罪だとか、不健全なかたちで不満が出てきていますから。やっぱり要注意ですね。気づいたら、ご近所がハンニバルのような人だらけになってしまわないうちに(笑)。
C う、それは怖すぎますっ! 早くグローバル経済がいい感じに巡るようになって、みんなで文化的で成熟した社会にして、やっぱり“高楊枝” 的な余裕が欲しいです。
H なかなかそういう風にできる突出した存在が出現するのは難しいんです。このグローバルジャングルという場所では。しかし、そのなかでは、日本は失業率もまだ4パーセントですし、世界最大の貯蓄大国ですから。これだけ豊かなんですから、やれることはたくさんあるはずなんです。
C 先月は「氷を溶かしに来た」と言って、中国の温家宝首相が来日しました。ビッグイシューのコラムでは『氷屋来る』というお芝居に例えていらっしゃいますが、そのココロは「現実から逃避したい人が脱却しようともがく物語……」。安倍首相も就任するなり中国に行ったりして、それなりに仲良くやろうという気持ちはあるようにも見えます。やっぱり現実から逃避したい人、ですか?
H ええ、氷を溶かして仲良くやろうと思うなら、なぜ憲法改正とか、教育基本法改正とか、従軍慰安婦問題はなかった、とか言えるんでしょう。そこはもう、分裂症じゃないですか。これでは誠意がないと思われてもしかたがないですね。
C 私なんかは、いわゆる戦後の民主主義教育というものを受けて育って「アジアの国々に対してはひどい事をしてしまった。もう一切戦争はしません」という考え方をスタンダードとして教わってきました。だから当然のように、従軍慰安婦問題なども認めて謝罪をすれば良いのにと思ってしまうのですが。
H ええ。ドイツはどうして受け入れられているかというと、謝り続けているからです。今までにもう充分謝ったからではありません。これでもかというほど、未来永劫謝り続けるという姿勢でいるわけです。何十回でも、何億回でも謝る。そういうスタンスに徹していますから。安倍首相の言動を見る限りでは、非常に傲慢というか、まともでないと言われてもしかたがないと思いますね。
C 政冷経熱などと言われていますが、これは確かに実感できます。日本が脱デフレできたのも中国経済の盛り上がりのおかげ、ですよね。第一、私が今着ている服も何割かは中国製です。
H ええ、もう日本と中国はひとつの経済だと言ってもいい。まさに一蓮托生! 日本は何でも作ってもらってますからね。ただこうして経済的な融合度が高まれば高まるほど、親しき仲にも礼儀あり、という側面への気配りが必要になると思います。万事を熱い経済関係頼みで解決してしまおうという発想は危険だと思います。距離が近くなればなるほど気配りし続けることが大切。
C いちばんの気配りポイントは、やはり歴史問題ですね。戦後民主主義教育ジェネレーションのひとりとして、現実逃避せず「氷を溶かす」方法をちゃんと考えようと思います。
浜さんが、毎号cafeglobeと同じトピックで記事を連載しています。合わせて読んで、理解を深めよう。
同志社大学大学院教授。欧州経済、国際経済のマクロ分析のエコノミストで、BBCなど海外のメディアからもよくコメントを求められる存在。Cafeglobeには、女性の力になれればと、スタート当時から執筆。趣味は「大量飲酒」!
浜矩子のお金の正体の話vol.39 Au revoir! 昔のフランス……。そして気になる“氷屋”さん

 

[ 82] アラファトにパウエル、ひとつの時代が終わり、世界を救えるのはもう日本しかないのだ - 浜矩子の超・常識塾! | カフェグローブ
[引用サイト]
http://www.cafeglobe.com/news/hama/index.html

アラファト議長の遺産の行方が気になる、塾生M(カフェグローブ経済班)
塾生 パレスチナ自治政府のアラファト議長が亡くなり(*1)、パウエル米国務長官が辞任(*2)してと、なんだか国際情勢のひとつの時代が終わろうとしているみたいな感じですね。時代の転換点なんでしょうか?
塾長 まず、パレスチナ問題(書籍版『超・常識塾』参照)やロードマップ(*3)はこれまでにも取り上げましたね。オスロ合意(*4)でパレスチナの暫定自治ができたのを踏まえて、アラファトが初代の自治政府の代表になった。その人が亡くなった今、暫定自治協定ができたときの立役者たちは、クリントンを除けば全員死んでしまったことになります。
塾長 アラファト、ヨルダンのフセイン前・国王。クリントンも表舞台からは退いていますから、言ってみれば、アラファトがオスロ合意に関わるプロセスの最後の生き残りだった。さぞや孤独感があったでしょうね。
塾長 そう。ラビンさんが暗殺されたとき、アラファトさんは素直に全身でショックを表してました。宿敵でありながら、共存を模索するプロセスを共に歩んだアラファトとラビンとの関係は、アラファトの死にまったく感慨を示さなかったイスラエルの現首相アリエル・シャロンとは対照的です。
塾長 そう言ってますね。これからようやく自分が交渉できる時代にパレスチナ側も入ったか、という意味にとれなくもない。シャロンからしてみれば、自分の登場以前にでき上がった図式と対峙してこなくてはならなかった。アラファトのパートナーは故・ラビン首相でしたから。全然反りが合わなかったんでしょうね。シャロンが意固地になったから、今のように状況が悪くなったわけですし。双方耐え難きを耐えて、イスラエルが占領したところを明け渡すとしたオスロ合意は、本当に大きな一歩だったのに。
塾長 住んでる世界がまったく違う2人だったということが、シャロン首相の「転換点」という言葉の中に込められていると思います。自分もこれからは和平に向かうぞ、という意味を含んでいることを願いますけどね。シャロンの顔を見ているとどうも……本当のところはよくわかりませんね。
塾生 片やパウエル長官辞任という報ですが、こちらも時代が変わることを示唆するようなニュースですね。
塾長 中東和平という観点からすれば、ロードマップのプロセスを、パウエルさんのいないアメリカがどう受け止めていけるのか、気がかりに思いますね。「多角的な国際合意のもとで世界と共に」というのがパウエルさんのスタンスでしたから。
塾長 これまでの中東和平プロセスは、パウエル的外交のほうがうまく行くはずのものでしたから、彼のような人がアメリカ側にいなくなったのは、非常に懸念されます。アラファト時代の終焉とパウエル辞任のニュースは、直接的には関係ないものの、大局的に見ればつながりがある。ネオコンになる以前のアメリカの世界との関わり方は、少なくとも、パウエルさんが自分に活躍の場所があると思えるようなスタンスでしたが、シャロンとラビンの中東和平への関わり方が違うように、これからのアメリカの世界への関わり方は、それとは違ってくるのかもしれませんね。
塾生 でも塾長、ラビンさんが亡くなってオスロ合意が反故になったり、パウエルさんひとりで国の方向性が変わったり、国と国の関係なのに、個人が変われば状況が変わるって、不思議な気もします。
塾長 国と言えども“人”ですから。ロクでもないヤツが上に立てばロクでもないことになる、という表れですよ。
塾生 では、国際情勢的に時代の転換期にある今、私たち塾生は何をどう見ていくべきなんでしょうか。
塾長 これからどこに向かうか、難しい局面ですからね。最悪の方向に行くかもしれないし。残念ながら、そのほうが想定しやすい。むしろ、最悪の方向に行かないためにはどうすべきかを考える場面ですね。アメリカがこれだけの一国主義の権化になってしまった今、それを牽制できるのは日本ですから。
塾生 ブレア首相がブッシュ大統領に会って、中東和平の打開に向けて説得しようとしたらしいですけど。
塾長 ブレアはもうダメでしょう。今、アメリカにお金をいちばん貸しているのは日本と中国ですよ。
塾長 はい、だんだんと。もちろん、圧倒的には日本。その、中国と日本が一緒になって「もう貸さない」となれば、メインバンクがダイエーにもう援助しない、というのと同じこと。つまり、貸す側がしっかりすればいいんです。
塾長 そうそう。威張る必要はないし、威張れる筋合いでもないですが、なんだかんだ言って、本当に世界平和のために奔走できる立場にいるのは日本なんですよ。
塾生 日本の外交って、今、試されてますよね。拉致問題、靖国問題、北方領土返還……、これまで溜めてきた宿題を解決しなきゃという感じ。世界平和以前に奔走する問題がいっぱいですけど。
塾長 溜めてしまっていると、前向きな発想ができないんですよね。私なんかもいろいろ溜めてると、今いちばんやるべきことができないですから。
塾生 うわぁ、心あたりありまくりです、それ(笑)。日本の国も、過去の清算で手いっぱいなんでしょうね。
塾長 個人レベルでは、「もーしょうがないっ!」なんて無視して突っ走ればなんとかなるかもしれませんが、国と国との関係じゃあねぇ。日本は怠慢ですよ、そういうところが。逆に、まじめなのかもしれませんけど。
塾長 もちろんすべて大きな問題ですが、目先の課題をクリアしなければ、将来の展望を持ったリーダーシップがとれない、って態度がね。実は“大国”なんだけど。
塾生 うーむ、大国なんて思えないです。国連安保理の常任理事国になりたいとかは言ってますけど。
塾長 言ってるクセに、それに値する大国的観野はない。そんな日本とは対照的に、お家の事情はめちゃくちゃで威張れる筋合いじゃないのに、ここぞという場所では平気で堂々としちゃう国もある。フランスなんかまさにそう。あのドピルパン外相(当時)の国連の場におけるパフォーマンスを思い出して下さい(*2003年2月27日参照)。日本にもあれぐらいのハッタリがあっていいんですよ。国力は、ほかの国がおよばないほど十分にあるんだから。
塾長 戦争の反省の上に立ってのことならいいですが、第2次大戦以前から、国際舞台での日本の態度は、どうも内弁慶ですね。中で大言壮語していても、対外的な場で真摯な声を発しない。
塾生 欧米には大きなこと言えないけど、アジアには威張っちゃう、みたいなところもありますよね。
塾長 本当に誠意を持って、がんばるべきときが今。突如として、“自衛軍”などという概念を持ち出して憲法改正を叫ぶよりは、もっともっと別の形で国際貢献できるし、すべきだと思います。けしからんですよ。現状はどうあれ、世界で唯一の平和憲法を持っている国だからこそ、胸を張って世界平和のために奔走できるということでしょ。核兵器を振りかざしながら世界平和を語るのとは訳がちがう。無防備な日本だからこそ、平和に語るときに説得力がある、ということじゃないのでしょうか。
塾生 平和に関しては、世界に威張れる既成事実はありますよね。戦後、国として1人も他国人を殺してないとか。プレゼン能力が低いのかなぁ。
塾生 世界のために奔走するなんて、日本には荷が重いんじゃないか、なんて言ってる場合でもなさそう。
塾長 それはナンセンス! こんなに国力も優秀な人材もある国なんですから。明らかにひとつの時代が終わり、過去にイニシアティブをとっていた人が誰一人それができなくなっている今、少しでも役に立てるとしたら……それはやはり日本です。
塾生 新しい時代か……。ここでみなさんにお知らせですが、超・常識塾も次回から装いを新たにヴァージョンアップします。
塾長 時代の転換期に、次のフェーズにみなさんで行くわけですね。しかし、装いは新たになっても、“三つ子の魂は百まで”ですから、心は同じですよ!
「故・アラファト議長、故・ラビン首相、また、イスラエル・パレスチナ問題については、いろいろと本が出ていますから、この機会に何か読んでみてください」(塾長)
毎日新聞2004年11月21日(日)朝刊のコラム「時代の風」に、アラファト議長の死去について浜塾長が寄稿されています。
11月11日、パレスチナ自治政府のアラファト議長が入院先のパリの病院で死去。翌日、アラファト氏の生まれ故郷エジプトのカイロで葬儀が執り行われ、その後、遺体は議長府のあるラマラに埋葬された。
11月15日、アメリカのパウエル国務長官が辞任を発表。後任はライス大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に決定。
2003年4月30日、アメリカ、EU、ロシア、国連の4者で構成される通称「カルテット」が、イスラエルとパレスチナ自治政府に示した中東和平案。双方の暴力の停止、パレスチナ独立国家の樹立などを、段階的に実現していこうとする内容。
1993年9月13日に調印された、イスラエルとパレスチナ間の平和協定。ノルウェーのホルスト外相の仲介で、交渉が進み、アメリカのクリントン大統領が保証人となり、当時のイスラエルのラビン首相とPLO(パレスチナ解放機構)のアラファト議長が、ホワイトハウスで歴史的な握手を交わした。
1995年11月4日、テルアビブで平和集会に参加していたラビン首相は、和平に反対する自国のユダヤ過激派の青年に暗殺された。
浜矩子さんを塾長に繰り広げる連載、「超・常識塾」が、このたび実業之日本社さんから単行本化されることになりました!
連載の内容に加筆し、トピックスをより深く知るための「課題」をプラス、さらに単行本だけの「特別講義」もあり。まるで本物の塾のように、塾長の熱いメッセージを感じ取れる充実テキストです。(編集部)
浜矩子のお金の正体の話vol.39 Au revoir! 昔のフランス……。そして気になる“氷屋”さん

 

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